押し貸し詐欺はすこし前までヤミ金手口の主流でしたが携帯電話購入詐欺の台頭により現在は随分と減ってきましたが消滅してはいません。便宜上ヤミ金というカテゴリーに入りますが公的な機関では詐欺として分類されていることが象徴です。つまり、高利貸と認識していないということです。

数年前に登場したこの詐欺ですが被害が表面化した当初に一度、社会問題になっていたと記憶しております。それから数年にわたり一線で話法を磨きつづけてきたため手口が多岐にわたっております。手口の説明と併せて見分けかた、被害についてご説明してまいります。

【1】初回連絡に数パターン

その時代により話法やテクニックが変わっておりますのでいくつか紹介してまいります。

・受付方式

申し込みをした後に折り返し電話がかかるのですがこの場で営業話法はなく、申し込み情報の確認と追加情報の聞き出しを行ってきます。女性のオペレーターが電話することもあるため違法金融とは気付かずに個人情報を教えてしまうケースが多数確認されました。

受付方式では初回の電話でネットの申し込みフォームに記載した内容、とくに勤務先情報の正確性について確認をしてきます。さらに、親族の連絡先や子供がいる家庭は子供の年齢や学校名を聞き出すこともあります。これらはすべて後の詐欺に対する布石ですが詐欺の実行犯では無い人物からの電話であるため会社の規模を大きく見せる意味もあったようです。受付方式の一番のポイントは詐欺の実行犯の前に1社入っていることにあります。受付をしている企業は申し込みフォームで仕入れた個人情報に電話で聞き出した情報を加筆して顧客である個人ヤミ金にその情報を売却しているのです。担当者を名乗って電話をしてくる2回目以降の人物は受付会社からデータを購入しており、担当者名が複数あるのは個人闇金がその数だけ存在していると仮定されております。

・携帯電話で連絡

申し込みをした後に携帯電話で連絡してくるタイプです。担当者を自称する人物が仮審査が通ったことを伝える発言をしてきますが携帯電話でかけてくることを指摘すると、このままでは審査に落ちてしまうので個人的に応援したいから携帯電話でまず説明をしたいといった趣旨の発言をして携帯電話発信の言い訳をしてきます。また電話回線が工事中だから会社から支給された携帯電話で連絡しているといった荒っぽい言い訳の場合もあります。

・固定電話で仮審査

大抵は東京03発信の番号で連絡をしてきますがフリーダイヤルや他府県番号で電話してくることもあります。仮審査が通ったなどと連絡し本審査にあたり情報の確認をしたいと告げられ受付方式と同様に勤務先情報の確認、親族や上司の連絡先、子供の学校を聞き出します。聞き出した電話番号は迷惑電話をかけるリストとして利用されます。

現在でも確認されているのはこの3種類ですが他にも債権回収業者を自称する人物から電話がかかるなど亜流もあるようです。

【2】返済履歴や実績つくりはウソ

さて申込をして初回の電話で勤務先情報等を聞き出された後、本審査だと言って再度連絡をしてくるヤミ金ですが、その際に共通するトークを使っており、相手の営業話法を知ることで詐欺を未然に防ぐことができます。

押し貸し詐欺を手口とする相手はまず、仮審査は通ったが信用情報会社の記録を参照するとブラックになっているから融資が出来ないといった発言をします。その後、このままではどこの金融業者も貸し出しはしてくれないだろうが当社は独自審査枠で貸し出しが出来る、と持ちかけてきます。

独自審査を行うためには返済実績が必要だ、返済をした履歴をつくることが必要だ、といった話法を展開し1万円から2万円の間のお金を振り込むので翌日から10日といった期間に指定した金額を返済し、数回同様の返済を続けることで返済履歴ができるので希望額の融資をすると持ちかけます。しかしこれは事実ではなく、彼らの目的は小額の振り込みに対して返済履歴をつくるという名目で何度もお金を払わせることなのです。

被害相談から1万円を振り込むといっても実際には5000円から7000円であり金額の差異を指摘をすると手数料金を先に引かせてもらいましたとの発言をします。返済金が2万円であれば約1週間で3倍から4倍の返済を要求していることになります。これは金利を軸に考えれば高利を超えて超高利となりますが彼らは高利貸をしている感覚は無いようです。

初回に5000円を振り込みそこから返済履歴、返済実績という名目でどれだけのお金を払わせるかしか考えておりません。

相手が返済履歴を作るとか返済実績を数回作れば融資が可能になると発した時点で押し貸し詐欺を疑っても間違いではありません。

【3】キャンセル料と迷惑電話

さていつまでたっても融資されず毎週毎週、返済履歴が足りないとか返済実績を作らないといけないと言われれば被害者も途中でおかしいと気付き支払いについて不信感を募らせます。そのあたりからヤミ金業者は本性を表してきます。

相談で多いのはもうこれ以上お金を払いたくないのでキャンセルを伝えるケースです。

この言葉をヤミ金に発することでヤミ金側は都合の良い2托話法を展開してきます。キャンセルを伝えると、

「これまでの返済履歴が全部ナシになってしまうしキャンセル料金がかかるけど払いますか?」

「キャンセルするとなるとこちらの経費を清算してもらうので手数料を請求します」

関係を断ち切りたいのであればお金を払って下さいということです。実際にキャンセル料金を払っても関係が断ち切れるわけではなく、別の担当者が上司だと自称し電話をかけてきてまた同じように週払いの返済作りに持ち込む発言をしてきます。

お金を一切払わないなど相手を突っぱねるとヤミ金業者は本来の荒っぽい正体を発揮してきます。彼らは初回に聞き出していた本人以外の連絡先に対して迷惑電話をかけ始めるようになります。最初は金融会社名を名乗り、お金を返さなくて困っているなどと周りに愚痴をもらしますがそれでも足りないと考えると勤務先で電話口に出た人物に対して脅迫発言を繰り返します。

「お前の名前を名乗れ、お前から回収する」

「駅でホームに立つ時は常に後ろに気をつけとけよ」

ヤミ金は金融会社ではありませんので適用出来ませんが、仮に金融会社だとしてもこのような発言は許されません。そして勤務先に電話をせざるを得ない明確な状況が無い限り個人間の契約である貸借契約問題について会社に電話するという行為は認められません。

【4】エスカレートする前に対策をとる

押し貸し詐欺はお金のやり取りが発生する前と発生した後ではヤミ金側の対応が全く異なります。お金が振り込まれてしまうと相手は経費を回収するため激しい取立行為を行ってきます。

一度でも返済をすれば何度もお金が取れると思われ次々と金銭の要求されてしまいます。その要求が満たされなければ迷惑電話でたたみかけるような行動に出てきます。詐欺は根本的に取れる人から盗るが定石です。従って相手にお金を支払って解決を試みる行為は全く該当しないのです。むしろ状況は悪化するだけなのです。

携帯電話購入詐欺や銀行口座のだまし取り詐欺と異なり時間が進めば取立行為が激しくなるのがこの詐欺の特徴です。時間をかけずに早期解決が詐欺被害を小さくする唯一の解決法です。

【5】銀行口座が止まる

押し貸し詐欺についてはもう1つ大変な問題があることを忘れてはいけません。相手が返済用に教えてくる銀行口座は犯罪によって手に入れられた他人名義の口座であるということです。
彼らが自分たちの名義で返済用口座を用意すれば警察の捜査で簡単に捕まってしまいます。そこで他人名義の銀行口座を手に入れて集金用口座として利用します。

他人名義の口座が凍結されたら別の口座を使って同じことを繰り返します。返済用の銀行口座が頻繁に変わるのはこれが原因です。

そしてこのことが押し貸し詐欺被害にさらなる問題を突きつけてきているのです。この問題で銀行口座を凍結するのは警察であることが多いのですが、警察はその口座に振り込んだ名義人の口座も凍結する場合があるのです。これは犯罪資金防止法の観点から手続きを取ります。

振り込め詐欺グループが使っている口座に振り込みをする人物も違法行為に手を染めている可能性があるから口座凍結をして犯罪資金が逃げないようにすると解釈すればわかりやすいかと思います。

被害者が返済していた行為は警察や銀行側から見れば、犯罪者に資金を提供していると映る可能性があるので口座の利用を停止するということです。

銀行口座が凍結されると社会生活に大きな影響を与えることになってしまいます。持っている口座が1つしかない場合、その方は銀行のサービスを利用出来ないということになります。給与の振込から公共料金の引き落としまで一切のサービスが利用出来ないというのは大変なことです。

そして、ヤミ金と関わったことで被害者ではなく加害者として捜査対象になる可能性もあることを忘れてはいけません。