2016年の秋口から急激に増加してきた新種の詐欺です。昨年夏に口座買取サイトが一斉摘発されたことが背景にあるのではないかと考えられております。警察は振り込め詐欺やヤミ金など特殊詐欺グループを摘発するにあたり道具屋と呼ばれる詐欺グループを後方支援する業者の存在に目を付けたのだと言われております。
詐欺グループが詐欺を行うために必要な飛ばしの携帯電話や飛ばしの銀行口座という他人名義の携帯電話や銀行口座を提供するのが道具屋の仕事です。この道具屋を摘発することで詐欺グループの動きを制限することで全体被害を減少方向に持っていく作戦であると思われます。
つい先日も振り込め詐欺を支援する道具屋が逮捕されました。彼らはバイク便業者を装って振り込め詐欺の出し子ならぬ受け子を支援していたようです。これからもこうした摘発は続くと思われます。マスコミも道具屋の逮捕については積極的に報道しておりますのでヤミ社会の人間は仕事がしづらくなっているようです。こうした事情から飛ばしと呼ばれる他人名義の銀行口座がヤミ市場で急騰しました。
警察の目が光っているため口座を用立てるのが難しくなったのです。品薄であれば価格は高騰します。そこで登場したのが預入れ融資詐欺と銀行口座だまし取り詐欺です。元々は携帯電話購入詐欺グループが携帯電話の転売より高値で売買される銀行口座に目を付けたのが始まりではないかとも言われております。
今後も増えていく可能性があるこの詐欺について傾向と対策を説明してまいります。
【1】口座買取詐欺
新種の詐欺が台頭してきた背景についてはすでにご説明いたしました。ここでは申し込みをしてから詐欺行為に至るまでについて説明してまいります。口座をだまし取る業者はホームページ集客型とサイト持たずに電話だけで営業してくる電話型に分かれます。
どちらのケースでも担当者を名乗る人物から電話がかかり、融資ができるのですが話を聞きませんか?と持ちかけてきます。お金に困窮している時にこのような連絡がくると話だけでも聞いてみようと思ってしまいがちです。彼らもそのことを十分に承知しており話法も確立されております。
相手はまず、信用情報会社の記録について話を始めます。これは携帯電話購入詐欺や押し貸し詐欺など近代詐欺の全てが使っているトークです。CICの情報では融資出来ないことになっている、ブラックになっていてこのままでは融資出来ないというマイナスな発言をしてきます。諦めかけるタイミングを見計らって、諦める必要はありません、独自審査だと融資できますから安心して下さい。といっていよいよ詐欺をしかけてきます。
「このままではどこも貸してくれないだろうが独自審査なら弊社で貸せる」
「与信ではNGだがウチなら融資することができる」
さも融資が出来るかのような発言で諦めかけた人の心をつかみに来ます。この落差ある発言で被害者の心理を巧みにコントロールしてきます。融資してもらえるかもしれないと思った相談者はどうすれば融資してもらえるのかを真剣に聞くようになります。その状態で彼らは詐欺話法を展開します。
「当社は預入れ融資専門だからキャッシュカードを預からせて下さい。預入れなので返済は自分の口座にしてもらえればOKです」
「銀行口座を担保にすることで担保融資が可能になります。キャッシュカードと通帳を送っていただければ即日融資します」
まともな精神状態でこのような事を言われても全く聞く耳を持つことは無いと思われますが、すぐ目の前に融資があるという特殊な心理状態だと違和感のある発言でも浸透してしまうことがあります。先ほどの落差がある発言は詐欺話法のポイントを最大限に魅せるための布石であることがわかります。実によく考えられてますが違法です。
預入れ融資詐欺は銀行口座をだまし取られてる前に対策することが大前提です。相手から銀行口座を渡せば融資するかのような発言がでたらその時点で詐欺と判断し、相手との関係を解消する対策を立てなければなりません。
【2】被害者ではなく加害者に
銀行口座をだまし取るこの悪質な詐欺商法ですが騙されてしまうと金銭的な被害以上に深刻な問題が待ち受けていることを知らなくてはいけません。銀行口座は銀行法と呼ばれる法律にそって提供されるサービスです。
お金を扱うこの商品は本人以外の第三者が本人のあずかり知らぬところで勝手に口座が使えることを禁止しています。
この規則を破れば責任範囲が及ぶのは銀行口座を所有している名義人になります。預入れ融資、銀行口座を担保に融資するというヤミ金業者の発言がいかに荒唐無稽であるかを知っていなければ身を守れません。
この詐欺に遭われた被害者の方が警察に相談に行かれらときの話がありますので下記します。
ヤミ金に銀行口座をだまし取られたことが分かったので警察に被害届を出しに行きました。そこで説明をすると警察官から、私のやったことは犯罪者かもしれない人たちに銀行口座を提供した行為で罰せられる可能性があると言われました。さらに、本当は売ってしまったんだろうとも言われました。
そんなことは絶対に無いのですが被害者ですというと、銀行口座を相手に渡したのは私自身で自分でやった行為は犯罪者を助ける行為だ。だから被害者とは考えられず場合によっては事情を伺うことになります、と言われました。
知らなかったと何度言っても聞き入れてもらえませんでした。私は捕まるのでしょうか。
深刻な問題です。質問に回答するならば、逮捕される可能性はあるということです。残念ながらこの詐欺においては無知を言い訳にすることは出来ないのです。銀行の口座を他人に渡すなどという行為が違法だというのは常識として知っていなければならないことなのです。
警察も銀行もこの点において情状酌量はほぼありません。また警察の主導による銀行口座の凍結は預金保険機構に情報としてスコアされます。口座を渡してしまったことによりその口座が犯罪グループの資金回収用口座として利用された可能性があるとリストされてしまうわけです。
振り込め詐欺救済法に基づく公告
この情報は全銀行、信用金庫が閲覧することができます。各行がチェックした際、自行が名義人に口座サービスを提供しているとわかると利用停止の手続きになると言われております。これから関連口座の凍結です。名義人が所有する全ての銀行口座が凍結するまでこの状態は続きます。
さらに新規口座を開設する場合にもこのリストは参照されます。つまり、所有している口座は凍結され新しく口座を作ることはできないということになる訳です。
【3】対策方法
銀行口座を相手に渡してしまっている方はすぐに銀行に出向いて口座の利用停止手続きを行い被害が発生する前に対策を立てなければなりません。不特定多数の人物からお金が振り込まれ、引き出されてしまうと大変なことになってしまいます。
そしてまだ口座を渡していない方についても迅速に対応する必要があります。口座買取詐欺はキャッシュカードなどを送らせるまで執拗に連絡をしてきます。キャンセルしたいと言えば経費がかかってるから清算しろ、キャンセル費用がかかっているから今日中に支払いをしろ、はては勤務先に迷惑電話をかけるなど、要求が通るためなら何でもしてくるような状態です。
お金を借りていないので大丈夫だ、という考えは捨ててください。これはヤミ金ではなく詐欺なのです。詐欺はお金が盗れると思えば出来ることは何でもしてきます。基本的なルールが全く異なっているのです。
この詐欺は被害に遭う前に対策をとらなければ社会生活が大きく変わってしまう過去と比較しても最悪の詐欺なのです。